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こでは、私が実際に指導した人たちの実例を紹介します。この方たちからは、現在連絡の取れなくなったA氏を除き、事前にサイト上での紹介に承諾をいただきました。名前などは伏せましたが、ここに紹介する人たちは現実に存在するので、仮に架空の人物と似ているとしても、それは偶然にすぎません。

 


私が、A氏の英語学習を手伝うことになったのは、アイルランドからの帰国後数年して、知人を介してでした。当時A氏は、一浪を経て中堅の私大を卒業後、中規模の商社に入社して数年を経た頃でした。確か、25歳だったと記憶しています。貿易会社に入ったものの、英語がまったく話すことが出来ず、どうしたらいいかと悩んでいる時に私に紹介されました。

喫茶店で初対面した彼は、178センチの私がやや見上げる長身の好男子(語感が古いな〜)でした。竹を割ったような性格の彼に、私の方も明確に、学習法の概略、学習プランなどを説明しました。英語の学習は、勉強というよりスポーツのトレーニングに類似しているという私の話は、彼にとって目から鱗が落ちる感覚を与えたようでした。と、同時に学生時代スポーツに打ち込んで来た彼には、受け入れやすいものだったようです。その場で、「それでは、お願いします。」ということになり、我々のパートナーシップが開始されました。

彼の当面の目標は会社で要求される、TOEIC700。入社以来受けた3回のTOEICのスコアは300台後半から400ちょっということでした。しかし、大学受験期、英語は得意な方で、大手予備校の模擬試験でも偏差値は常に60を越えていたそうです。知識がまったく稼動していない典型的なケースです。英語で話し掛けてみても私の言うことは半分もわからないし、自分では中学1年程度の文を組み立てることもうまくいきませんでした。私はまず中学2、3年のテキストを音読パッケージで仕上げることと短文暗唱=瞬間英作文で中学英語の文型をマスターすることを課しました。また、ためしに中学テキストを読み上げてもらったところ、ローマ字読みの混じるかなりいいかげんなものだったので、あやふやな単語については必ず発音記号を調べ、モデルのネイティブ・スピーカーの発声に倣って音読するように指示しました。このいいかげんな単語の読みは、受験英語ではかなりまかり通っていて、テストではそこそこの点を取る学生が、「geography」を「ゲオグラピー」、「fake」を「ファック」などと発音してくれて絶句させられることがあります。

A氏の指導は、定期的なレッスンではなく、電話で連絡を保ち、必要な時に会って質問に答えたり、指示を与えるという形態でした。ムードで英語を始める人の大半は、この中学英語の基礎的トレーニングがこなせず脱落してしまうものですが、スポーツで鍛えたA氏にはどうということも無く、トレーニングは順調に進みました。中学英語のトレーニングがかなり進んだ頃、電話で話した際、彼はうれしい変化を私に告げました。週1回、会社が無料で行う英語の講座で、アメリカ人講師の言うことが非常によくわかるようになったというのです。眠っていた英語の基礎が稼動してきた兆しです。

ほどなく、彼は中学の英語テキスト2冊の音読パッケージを終了しました。所用期間は4、5ヶ月でした(一冊あたり合計300回の反復がノルマで、現在の2〜3倍でした!)。そこで、短文暗唱で中学英語をさらに熟成させながら、大学受験の英文法と精読を復習するようにアドバイスしました。彼の場合、文の構造をしっかりと把握する精読の方法については問題ありませんでした。しかし、文法の方は、頭での理解はしているものの、声を出し、文を書き付け、サイクルを回す方法は全く知りませんでしたので、喫茶店で1〜2時間かけて教えました。文の音読を実際にやる際、彼の声が大きく他の客の注視が集まったのを覚えています。

そんな中彼から、10ヶ月ぶり位に(私の指導を受け始めてから半年程度だったと思います)受けたTOEICで200点近くスコアが伸び、600台後半に入ったと興奮した声で電話が入りました。その後、A氏は、文法問題集2冊と英文解釈の本一冊を3〜4ヶ月で終了しました。中学英語による英語回路の設置は完了。大学受験レベルの文法、精読も完了。そこで、私は彼のトレーニングを、次のステージに進めることにしました。我々のパートナーシップ開始から7〜8ヶ月のことでした。

音読パッケージのテキストのレベルを上げ、アメリカ英語教本中級用(研究社)のpresentaion部分を使うようにアドバイスしました。短文暗唱=瞬間英作文には「話すための英文法」@A(市橋敬三著。研究社)を勧めました。また、新たに通勤(往復で2時間強)時間を利用してプレ多読も開始してもらいました。まず、第一次として、私が持っていたladderシリーズや南雲堂の対訳本を合わせて20冊位を貸しました。アメリカ英語教本中級用の音読は1〜2ヶ月で終わったと連絡を受けたので、そのまま上級に進んでもらいました。「話すための英文法」も楽しく進んでいたようで、会社の無料英語講座でも英語がスムーズに出始めて講師や同僚が驚いていると嬉しそうに語っていたのはこの頃だったと思います。TOEICのスコアも、私のアドバイスを受け始めてから1年たったころには、会社が要求する700点をすでにクリアしていました。ただ、TOEICの700というレベルが、彼がイメージしていたほど高くないことを実感して、また、いまだ天井にぶつからない英語の学習も面白くなってきたということで、我々のパートナーシップはそのまま継続されました。

A氏のトレーニングの進行はその後も順調でした。アメリカ英語教本上級用も終了。次の音読パッケージは彼自身が選んだもので、私も見せてもらいゴーサインを出したのですが、何だったのか思い出せません。「話すための英文法」の@Aは4〜5ヶ月で終了。次に「松本亨英作全集」(全10巻)を勧めました。私が貸していたプレ多読用の教材も読み終わったということでさらに20冊位を新たに渡しました。プレ多読に関しては通勤列車の中だけでなく、休日を利用してかなり集中して読んでいたようです。TOEICのスコアはこの時期700台を順調に伸びて行き、パートナーシップ開始から1年半を経た頃には780位になっていました。

しかし、TOEICのスコアはこれをピークに伸び悩み始めました。というより、下降して、一度など700ぎりぎりまで落ち込みました。時々会う折、彼は英語の難しさをしきりに訴えました。ところが、時々英語で話すと、自信喪失の表情とはうらはらに初対面の頃とは比べ物にならない流暢な英語を話すのがちぐはぐでした。この時期、彼のトレーニングは音読パッケージが休止状態。短文暗唱=瞬間英作文もペースダウンして、「松本亨英作全集」も3〜4冊で足踏みをしていました。多読は順調で残りの本も完読し、ラダ―シリーズ、対訳本、サイドリーダーなどを合計40〜50冊くらい読んだことになります。そこで、今度はボキャビルに取り掛かりながら、一方で、学習者用で無い、一般の新聞・雑誌・ペーパーバックを読み始めることをアドバイスしました。

A氏は、新聞はジャパンタイムズに決め、私の指示に従い、週に2〜3回買い一面と社説、及び興味を持った記事を読むスタイルを取りました。雑誌は、TIME、NEWSWEEKは歯が立たないということで、リーダーズダイジェストを読むことにしました。ペーペーバックは厚い英語の本など読む自信がないと及び腰でしたが、私の勧めで、読み易いシドニーシェルダンで入り、恐怖症が少し治ったようでした。ボキャビル、多読がペースに乗り始めた頃、彼のTOEICのスコアも安定し始め、700台後半に戻していました。彼からの電話による質問や会いたいという要請が急速に少なくなってきました。

と、突然彼から明るい声の電話が来ました。TOEICでついに800を越えたという報告でした。確か830か840だったと思います。初対面の時から2年ちょっとだったと記憶しています。その後彼からの電話はさらに少なくなり、時折かかってくる際も一般的な近況報告で、英語に関する質問がほとんど無くなっていました。やがて、彼からの連絡は途絶えました。「あー。これで我々のパートナーシップは完了したな。」という風に私は理解しました。私も自分のことで忙しく彼のことを徐々に忘れ始めていました。

そんなある日、突然彼から電話がありました。私は急速に物事を忘れる人間なので、A氏のことを思い出すのに数秒を要しました。最後の連絡があってから半年以上が経過していました。A氏は私の近況や健康を尋ね、自分の近況について話しました。私は、体育会系の彼が、きちんとした形で我々のパートナーシップを終えたいのだなと感じました。「英語はどう?」と私は水を向けてみました。「あ、英語は順調です。もう普通に使ってるだけですけど。トレーニングは特にしてません。あ、TOEIC、870(880だったかな?)いきました。」彼は、一時はあんなに捕らわれていたTOEICのスコアについては最後に付け加えただけでした。「長い間、お世話になりました。一度お会いしてお礼を申し上げたいのですが・・・」体育会系のA氏でした。「ええー。いいよ、いいよ。そんなこと。それとも、何か貸してあったものがあったっけ?本とか」私が言うと、「いえ、本は全部お返ししました。」と彼。「でも、最後にきちんとご挨拶しておきたいので・・・」律儀なA君ですが、私は「きちんとしたご挨拶」はするのもされるのもしんどい人間です。やんわりとそれには及ばない、どこかで偶然会ってお互い「やあ、久しぶり」というのが好きなのだと説明しました。「まあ、A君が僕のために、手編みのセーターでも縫ってくれていて、手渡したいというのなら別だけど」季節は晩秋になっていました。私のくだらないジョークに真面目なA氏は苦笑しました。その後2、3言交わし我々は電話を切りました。

A氏が本格的に英語のトレーニングを開始してから、TOEICスコア400前後から800台後半に達する期間は2年半程度と、短いものでしたが、本人にはなかなか大変だったと思います。この期間、彼は会社の同僚などとの付き合いは必要最低限に抑えていたし、帰宅後の自分の時間や休日をほとんど英語に注いでいました。つきあいの悪さに、大学時代から付き合っていた恋人に振られるという苦い経験もしました。その頃、喫茶店で会った際、「彼女に振られました・・・」と告げた彼の消沈した表情は痛ましいものでした。普段は個人的なことを話す相手ではない私に対して失恋を告白した彼の心情は、誰かに聞いて欲しいというものだったのでしょう。恋愛指南役ならぬ私は「ああ、そう。残念だったね。」といったきり口をつぐむしかありませんでした。胸の中では、「泣くなA君。いい女性はまた見つかるさ。これくらいのことで愛想をつかす女の子は、どこかでいずれ別れることになったさ」と呟いていましたが。

 

 

 

 

 


Bさんが私の元に訪れたのは'99年1月。もっとも初期に私の教室を訪れてくれた人です。前年の10月に教室を開いたものの、いやー、暇で、暇で。しばらくは、生徒がさっぱり集まらず、毎日九十九里の海行っちゃ、投網でボラとってましただよ、私は。まあ、無理もありませんでした。たまに問い合わせがあっても、「勉強やだけど、英会話チョーうまくなりたーい」などというのは、自動的にお引取り願ってましたから。

Bさんが訪れたのはそんな折でした。彼女が本気の学習者であることは電話で話してすぐにわかりました。教室に来てもらった際に、彼女は私が教えたかった学習者であり、彼女にとって私の教室は探していた場所であることが確認できました。

Bさんは30代前半の、医薬系の専門職に就かれている知的な女性でした。英語学習の目標水準も非常に高く、「どのあたりまでおやりになりたいですか?」という私の問いに、「日本語と同等に使えるレベルまで」と冷静な顔で答えました。冷や汗を拭いながら、私は答えました。「私自身そのレベルには程遠いのですが、そこにたどり着くのに絶対に通らなければならない中継地点になら確実にお連れできますよ。」そして、私たちのパートナーシップが始まりました。

彼女は、私の教室に来る10年程前に英検2級を取り、同時期に受けたTOEICでは495点でした。その後独学で勉強を続け、1年前から大手の英会話学校で週一回のレッスンも受けていました。しかし、学習の内容を細かく訊いてみると、大学受験の学習を繰り返している形態で、肉体的なトレーニングがほとんどなく基底能力を高めるのは困難なスタイルでした。また、基底能力の低い状態で、週一回程度の会話レッスンを受けても英語力に根本的な変化は起こりません。ためしにアルクのTOEIC模試で力を図ってみると580点という判定が出ました。確かに、力は上がっていますが、10年の成果としては満足の行くものではありません。

まず、中学テキストSunshineの2年、3年用の音読パッケージと、中学文型の短文暗唱=瞬間英作文を開始しました。授業では、彼女の弱点である文法・構文の理解に力点を置きました。Bさんにとって、テキストをお腹から声を出して音読するのは初めての経験だったようで、早速始めた音読パッケージトレーニング中に貧血を起こしたそうです。これは、その後も、何人かの生徒に報告を受けました。しかし、声を出すトレーニングにもすぐ慣れ、トレーニングは順調に進みました。Bさんはフルタイムの仕事をもつキャリア・ウーマンで、しかも仕事の内容は非常に神経を使うものなので、平日帰宅後のトレーニング時間は平均2時間弱、しかし数年で大幅に英語力を伸ばすためにはやや少ないので、休日に学習時間を多めに取るスタイルでした。

1月に始めた音読パッケージはほどなく終了したので、すでに精読を済ませていたアメリカ口語教本上級用に入りました。短文暗唱=瞬間英作文は中学3年分の文型別文例集3冊(約1200文)を完成しました。しかし、ばらばらの英文を素材にするこのトレーニングを、彼女はあまり好きになれないようなので、続けて「中学英語24時間話せる」などに進むのは見送ることにしました。また、機械的に単語を覚えていくことにも気が進まないようなので、ボキャビルトレーニングの開始も延期することにしました。当面は、肉体的トレーニングは音読パッケージに絞り、後は精読、文法の学習に集中することとなりました。しかし、力はじりじりとつき、彼女は秋には過去に何度か落ちていた英検準一級に合格し、年が明けて'00年一月のTOEICのスコアは680点になっていました。

Bさんの英語力はこの後やや伸び悩むかのように見えます。5月に受けたTOEICでは前回と全く同じ680点でした。しかし、中級レベルになると多少の足踏みはごく普通のことです。このレベルになると次の段階に進むのに時間がかかるようになり、その間、ぴたりと歩みが止まっているかのように感じることがあります。しかし、実際には英語力は潜在的に蓄えら続けられています。いわゆるプラトーという段階です。英語力が右肩上がりで上がっていくのは初心者の頃だけで、ある程度力がついてくると、頻繁に、このプラトーにぶつかることになります。船が動かない凪のようなこの時期に多くの人が英語の学習を投げ出してしまいます。英語の学習を開始する人の80パーセント以上は、スタート直後に学習の単調さに耐えられず投げ出してしまいますが、次に危険なのは最初のプラトーに出くわす時です。実際には、慌てずにしばらく学習を続けていれば、また英語力は伸び始めます。

Bさんも最初のプラトーに遭遇したわけです。誇り高い彼女は泣き言など言いませんでしたが、多少の落胆はあったようです。私は、これは正常な、予期されたことなので気にせずトレーニングを続けるようにアドバイスしました。一方、トレーニングでは、新しいメニューとして、プレ多読を開始してもらいました。精読はしっかりとできていたし、短文暗唱=瞬間英作文などの肉体的トレーニングが少なくなっていたので、いいタイミングだったのです。彼女は、教室に用意してあるladderシリーズやハイネマンなどの語彙制限本でプレ多読を行うことにしました。もともと読書家の彼女にとってこれはスムーズに行えるトレーニングで、週に2冊くらいのペースで読破していきました。音読パッケージはアメリカ口語教本で継続、授業では相変わらず文法、精読に重点をおいていました。

Bさんは、ladderシリーズ、ハイネマンを合計40冊以上、半年を経ず読み上げてしまいました。英文の流れに乗る体質が出来上がったので、プレ多読を終え、一般のペーパーバックの読書に移行にゴーサインを出しました。音読パッケージはアメリカ口語教本の上級用のpresentation部分を用いていました。授業では、ジャパンタイムズ社説集の精読と文法の問題集が中心です。このようなトレーニングを続ける中、Bさんは、プラトーを脱出し、11月のTOEICでは760点でした。

この時期Bさんの英語トレーニングは多読中心で進みましたが、音読パッケージはやや飽きてきているようだったので、変化をつけるために、シャドーイングを集中的に行うことにしました。10分ぐらいのインタビューを1〜2ヶ月かけて完成度の高いシャドーイングが出来るようにするというプロジェクトです。このトレーニングの成果は劇的な形で現れました。'01年3月のTOEICでBさんは810点と、ついに800の大台に乗ったのですが、この際リスニングセクションは、4ヶ月前から85点も伸び470点になったのです。彼女によると、生のインタビューの不明瞭で早口の英語に慣れたため、TOEICの英語は実にはっきり、ゆっくりと聞こえたそうです。

もともと読書家であるBさんの多読は順調で、「ハリーポッター」、シドニー・シェルダン、ダニエル・スティール、スティーブン・キングと読破していきました。数冊の問題集をこなして、文法もかなり安定度を高めてきました。7月のTOEICで彼女のスコアはまた伸び850点でした。

その後も彼女のペーパーバックの多読は進みました。彼女は読み終わった後、とっておく必要のない本は教室に寄付してくれるので、私の教室の本棚には彼女から譲り受けた10冊以上のペーパーバックが、他の生徒の貸し出し用に並んでいます。その後、Bさんは多少のリバウンドと、健康上の理由による数ヶ月の休養をはさんでTOEICではいわゆるAクラスの860点に達しました。

 

 

 

 

 


Cさんが私のもとを初めて訪れたのは'99の夏で、当時彼女は大学3年生でした。私はいつものごとく英語の上達に必要なトレーニングについて説明しました。どうやら彼女は手っ取り早く英語はモノになる秘法のようなものを聞けると思っていたらしく、その時は教室には入らず帰っていきました。私のところに来て、英語に上達するのにはそれなりの時間と努力が必要だということを知り、失望してそのまま帰る人は多いので、私は彼女のことは特に記憶にとどめていませんでした。

同じ年の暮れ近く、再び彼女から連絡がありました。いろいろ考えた末、私のメソッドでやってみる決心をしたというのです。Cさんの当面の目標は、英検の2級合格でした。ためしに、過去問を解いてもらうと、正解率は4割5分程度、語彙の問題は全滅に近い状態でした。語彙強化を中心に英検対策をやり、6月の本番で合格基準点に達させることはできるでしょう。しかし、私の教室ではこういう事は一切しません。私の教室は、英検やその他の英語資格試験の受験対策塾ではないからです。私がやることは、学習者の基底能力を根本的に底上げすることだけです。確かに英検のように対策をしやすい試験(それも2級まででしょうが)の場合は、問題解きなどの学習をすることが、合格のために有効でしょう。しかし、そうした方法で合格してもその人の英語力そのものが上がったという保証にはなりません。テストを受けるにせよ、あくまでも道標として使い、「〜テスト・・・日で合格」という教材で受験勉強するのではなく、基礎力そのものを底上げするトレーニングを積み、テストの直前に過去問などに少し当たってみれば十分です。それでも、正確に基底能力を測定するTOEICやTOEFLなどのスコアはぐんぐん上がっていくし、英検のように癖のあるテストでもいずれ受かります。

Cさんの学習は、2000年1月から始まりました。まずは定番の中学2、3年テキストの音読パッケージ。そして、中学文型の短文暗唱=瞬間英作文です。Cさんは3ヶ月程で、中学2年、3年用のテキストの音読パッケージを終え、3冊の短文暗唱=瞬間英作文テキストも終了しました。ちょうどその時期に、彼女は3月のTOEICを受験しました。指導が始まりすぐに彼女の潜在能力に気づいた私は、なかなかのスコアが出るのではと思っていましたが、案の定いきなり610点を取ってしまいました。彼女が英検2級取得を目指した理由の一つには、就職活動の際履歴書の資格欄に記入したいということがありました。その点ではよりポイントの高いTOEIC600以上でこと足れりと、英検受験はあっさりとキャンセルしてしまいました。

しかし、ここからが問題でした。教えるうちに彼女が、持っている能力の半分も使おうとしないタイプだということもはっきりしてきたのです。まず、トレーニング時間の問題。Cさんは効率よく大学の単位を取ってしまい、4年次にはあまり通わなくてもいい状態でした。ですから、英語のために使える時間がふんだんにあるはずです。ところが彼女の一日あたりの学習時間は一時間程度でした。多忙な社会人でもう少しやるところです。理由を訊いてみると、「私はテレビっ子なんです。それからTVゲームマニアなんですよ。この2つに一日10時間は必要なんです。」めまいを抑えつつ、しばらくの間、英語の優先順位をテレビとゲームより上に出来ないだろうか?と聞くと、それはできないときっぱり拒絶。それでは、テレビとゲームに費やす10時間のうち2〜3時間を英語にまわすのはどうかとご意向を伺うと、「そんなことしたら、わたし気が狂いますよぉ!」とさ。次はトレーニングの好き嫌いの激しさです。Cさんは、精読のように頭を使い勉強することは苦にならないのですが、肉体系、反復系のトレーニングが嫌いでした(概して誰でもそうなのですが)。

そういうわけで、彼女の英語トレーニングは授業の精読中心。音読パッケージはやるものの完全にこなすのは第1サイクルだけで第2サイクルは嫌いな個所は飛ばしたり、反復回数を極端に減らしてしまう不完全な形でした。単文暗唱=瞬間英作文は中学文型の後、「中学英語で24時間話せる」に進めてはみたのですが、まもなくストップしてしまいました。私は頭を抱えたまま、精読と文法を中心にトレーニングプランを進め、なんとか続いている音読パッケージが単文暗唱=瞬間英作文のように立ち消えにならないように気を配りました。時々、ハッパをかけようとするものの糠に釘の状態で、Cさんはまったくマイペースの学習スタイルを守っていました。

TOEICの好スコアで幕を開け、2000年は実り多い年になるはずでしたが、その後ほとんど動きがありませんでした。中学英語の音読パッケージと単文暗唱=瞬間英作文の後消化した内容は、「速読速聴英単語」(増進会)の精読、及びその不完全な音読パッケージ、「シリウスジュニア」(旺文社)による文法の概括といった程度でボリュームの無さは覆うべくもありません。

そんな中、前回から一年を経て、'01年3月に受験したTOEICで、Cさんのスコアは690点。彼女の潜在能力の考えると普通程度にトレーニングしていれば最低でも800点台に乗っていたでしょうからいかにも不満足な伸びです。ただ、英語力が伸びているのも事実です。しょっぱなのトレーニングで出来上がった英語の初期回路が、その後も細々と続けた音読パッケージのおかげで保たれ、精読などからの栄養分の吸収率を高めてくれたのが一因。もう一つは精読と文法問題集をやったことが、大学受験経験者とは信じられないくらい低かった語彙と文法力を多少は引き上げたことでしょう。

一方、彼女の進路には大きな変更がありました。大学卒業後就職した会社を早々と辞め、彼女はオーストラリアへの留学を決めたのです。9月の留学まで私のもとでの学習を継続するということでした。それでは留学を有意義なものにするためには、少しペースを上げ英語力をもう一段上げようと、私は提案し、彼女は私が作るプランを実行することに同意しました。ところが、一向にトレーニング量は上がらず、週ごとの課題もほとんど消化できません。ある日、とうとう業を煮やした私がきつめの言葉を投げると、気の強い彼女も言い返し口論になってしまいました。彼女はかなり頭に来たらしく、ブレーク時間に私が出すコーヒーにも口をつけず、授業が終わると憤然と帰ってしまいました。あらら、パートナーシップもこれで解消かと思っていると、翌週Cさんは何事も無かったかのように教室にやって来ました。

こうして、私たちのパートナーシップは'01年の7月一杯まで継続しました。オーストラリア留学を目前に控えやや本腰を入れたCさんが約4ヶ月で消化したメニューは次のようなものでした。まずは、弱点の語彙力を上げるために「DUO」によるボキャビル。英文リーディング大作戦(初級)」(三省堂)の精読及び音読パッケージ。「速読速聴英単語」の少ない反復回数でのリピーティング、シャドーイングのサイクル法による復習。7月の終わりにこれが完成し我々の1年半程のパートナーシップも終了。と同時に彼女は留学前の最後のTOEICを受験。スコアは745点でした。Cさんは9月にオーストラリアに飛び立ちました。

その後Cさんはオーストラリアから何回かメールをくれましたが、文体を備えた巧みな文を書ける人で、やっぱり頭がよかったんだなあと感心しました。彼女はオーストラリアで2年勉強して、彼の地の大学を卒業して帰国。さらに勉強を続け学者の道に進むべきか、実社会に出るべきか思案中です。

 

 

 

<Cさん近況>
最近Cさんからメールが入り、5月にTOEICを受験していて、スコアは935点だったという報告を受けました。彼女らしく、準備らしい準備をしない受験だったそうで、対策をすればおそらく950点以上が出るでしょう。マイペースのCさんがはじめて実力の片鱗を見せてくれた感じです。メールの結びの文句は「人生、楽しても何とかなる!これからも実践していきたいと思います。」でした。Cさんあなたには脱帽です。

 

 
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